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国産国麦ゆめちから

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小麦畑から食卓まで 北海道座談会

[小麦の品種開発]

帯広畜産大学 教授 山内宏昭氏

帯広畜産大学 教授

山内 宏昭

[小麦の生産農家]

(有)道下広長農場 代表取締役 道下 公浩氏

(有)道下広長農場 代表取締役

道下 公浩

チホク会 会長 山川 健一氏

チホク会 会長

山川 健一

[小麦を扱う製粉事業者]

(株)山本忠信商店 代表取締役 山本 英明氏

(株)山本忠信商店 代表取締役

山本 英明

[商品の開発・販売]

敷島製パン(株) 代表取締役社長 盛田 淳夫

敷島製パン(株) 代表取締役社長

盛田 淳夫

敷島製パン(株) 研究開発部 パン開発グループ 主任研究員 栗田 木綿子

敷島製パン(株) 研究開発部
パン開発グループ

主任研究員 栗田 木綿子

大地を育てる男たち

生産者の誇りと責任が、つながりを育む

大地を育てる男たち

生産者の誇りと責任が、つながりを育む

司会:日頃から生産者であるチホク会のみなさんとお付き合いのある山本社長から見て、チホク会のメンバーとはどんな方たちですか。

山本:一般的に生産者は収穫物をJAや集荷業者に出荷して、「はい、OKです。お受けしました」と言われて終わるんですよ。ところがチホク会のメンバーは、その先のことも考えている。「今年の小麦に対してPascoさんはどう評価されたの?」と、そこまで気にしてやっている人ばかり。「出荷したら、おしまい」の方が楽だけど、そういう評価に対して誇りや喜び、やりがいを感じる人がチホク会のメンバーだと思うんですよ。

道下:私は山川さんの前にチホク会の会長をしていたんだけど、なかなか枠にはまらない人が多くてですね(笑)。ただ、私も含めて自分の仕事に対してすごく誇りを持っているし、責任も持っている人ばかり。そういう人たちは、やっぱり自分のつくったものをしっかり食べて欲しい、きちんと使って欲しいという想いがずっとあるんですよね。

栗田:私の場合は、道下さんと山川さんのお顔を拝見しているので、“ゆめちから”の小麦粉を見ていると、お二人のお顔がちらついてくるんです(笑)。

道下:夢にまで(笑)。

山本:うなされて(笑)。

栗田:なんというか、変なパンをつくるなと(笑)。道下さんや山川さんたちの「Pascoに渡す小麦をちゃんとつくらなければ」という想いが伝わってくるので、生産者の方に対して恥ずかしくないパンをつくろうといつも思います。

山内:今まで生産者の顔が思い浮かんだことは?

栗田:ないです、ないです。私は“ゆめちから”と出会うまでは、小麦粉は頼んだら来るものと思っていて、それを使って試作したりするだけでしたから。まるで工業製品みたいな感覚ですよね、小麦なのに。でも今はパンも農作物だと思って欲しい、そう感じています。

道下:世の中の人たちに、実際に農作物を栽培する大変さは、やっぱり知られていないんですよね。私がチホク会の会長だった時に、「農業にはどういう人がいて、どんな想いでやっているのかを知ってもらって、ファンになってもらうことが大事だ」という話をずっとしていたんですけど。知られていないことがネックになって、生産者の想いが伝わらないというのが、ちょっと寂しいし、それが生産者のモチベーションにも影響してくるのかなと思う。

畑での“ゆめちから”

畑での“ゆめちから”

道下:最初は収穫のことも気がかりで。秋播き小麦には野毛(のげ)5が生えているものは今までなかったんですね。“ゆめちから”は秋播き小麦でも長い野毛があるので、収穫時はどうなんだろうと。以前、野毛がある春播き小麦の収穫ではコンバインに野毛が詰まってしまい、畑をひとまわりして刈り取るたびにコンバインの掃除をしていたので、収穫にすごく時間がかってしまった。

司会:苦労されたのですね。


野毛の長い”ゆめちから”の穂

道下:そうですね。収穫というのは結構タイムリーにやらなきゃダメなので、コンバインの掃除という余計な作業があると時間のロスになってしまう。そう思っていたんだけれど、実際“ゆめちから”は、その心配には及びませんでした。

山本:春播き小麦より野毛が硬いから、しっかり乾燥している状態で刈れば、パキパキ折れるんですよね。

道下:うん。本当にバラバラになっちゃうから詰まらない。

山本:春播き小麦ほどは詰まらなくて、収穫には心配していたほどの影響はなかった。ただ、慣れていない人は、朝露に当たった後とか、小麦がしっとりしている状態の時に刈ったりするので、それはダメですね。

司会:収穫にはどれくらいの期間がかかりますか。

山川:1週間くらいですね、大体。畑の面積にもよりますけど、1週間から10日間くらいです。

山本:同じ十勝でも、各農家の畑の場所によって収穫する時期はずれるんですよ。

道下:種を播く時期はみんなそんなに変わらないんですけれど、収穫する時期は結果的にずれますね。最初は暖かい十勝の中央部から始まって、そこからだんだん周辺へと収穫のタイミングが移っていく。

山川:うちは道下さんのところより2日早く収穫し始めました。

司会:種を播く時期は同じなのに、収穫する時期が異なるというのは。

山内:畑によって立地環境や日照条件なども異なってくるので、小麦の生育にも違いが出てきます。同じ時期に種を播いても開花する時期が早いと、収穫時期もおのずと早まるということです。なので、収穫期間は十勝全体なら2週間くらい、北海道全体で言えばたぶん1ヶ月くらい。

山川:野毛の話に戻りますが、私は毎日この長い野毛をなでながら、小麦の穂をかき分けながら生育を見ていますよ(笑)。

※5 野毛

小麦の穂から出ているヒゲのようなもの。

よりよい小麦づくりのため、学び続ける

よりよい小麦づくりのため、学び続ける

司会:山川さんは“ゆめちから”を栽培して何年目ですか。

山川:私は農家をやって20年で、“ゆめちから”の栽培は4年目です。今年はまだ収穫前なので勝負がついていないんですけれど、1年目より2年目はもっといいものをつくろう、2年目より3年目はさらにレベルの高いものをつくろうと、常に今のレベルを超えるものをつくるんだという気持ちでやっています。まだ栽培技術も確立できていないと思いますし、私たち農家が“ゆめちから”の本当のパワーを見出せていないのかなと思いますので、もっともっといいものができると思っています。

道下:“ゆめちから”に興味を持つ生産者は増えましたよね。チホク会のメンバーも増えましたし。

司会:ということは、“ゆめちから”について紹介したり、栽培について学んだりする活動もされているのですか。

山川:そうですね。年1~2回、チホク会のメンバーが集まり、畑に行って肥培管理(ひばいかんり)6や作物の状態を見ながら栽培体系などを勉強しています。農業改良普及員7の方を招いて指導していただき、つくり方を周知していったり、「こういう栽培体系がいいね」というのを勉強したり。

山本:町村の枠を超えた勉強会はまずないし、同業者に自分の畑を見せることも最初は考えられませんでした。チホク会はそれができたのもよかったね。

山川:チホク会ではメンバーが収穫した小麦の品質をチェックするんです。チェックする時は誰が栽培した小麦かわからないにようにして、公正に格付けをするんですよ。そういう取り組みで、互いに「頑張ろう」と切磋琢磨して、みんなでいいものをつくっていく。胸を張って「チホク会の小麦だ」と言える高品質なものを安定的に出せるように、という取り組みは昔からやっていますね。

山本:だから、妥協する人はいないと思いますね、チホク会には。

山川:栽培技術の他に、土づくりのための土壌分析のグループに所属し、勉強会もあって、これはもう元素記号が飛び交うような学びであって、土壌の中にいる微生物のことも考えるスケールの大きな学び。もう何て言うんでしょうね、地球を相手に農業をやっているんだというスタイルですね、本当に。

山本:今の農業には科学的な知識も必要です。昔の経験則だったやり方とは変わってきています。だから先代の考え方とは全然違うよね。

山川:うちの父は、今の私のやり方を理解できないと思います。「種と一緒に肥料を撒かないのか」と言われていますから(笑)。私はさっきも言いましたけど、種と一緒に肥料は撒かないというスタイル。極力ムダはなくしたいというか…。

司会:ムダというのは?

山川:ムダにはならないのかもしれませんが、肥料のコストもかかるものですから。やらなくても小麦がきちんと育つのであれば、いらないですよね。バランスさえ整えば、土のパワーってものすごいですし。4月、5月、6月と温度が上がっていく時期は、土の中のエネルギーもものすごくて、微生物と一緒に土の養分も出てきます。そこを加味しながら栽培していて、育ってきた“ゆめちから”をニヤニヤしながら眺めて(笑)。

道下:私の農場でも、約10年前から小麦本来の生育をさせるために、本当に必要なものは何かを考えて、肥培管理なども工夫して。ムダなコストはなくして、なおかつ品質は上げていこうと取り組んだんですね。

山本:みんな結構変わってきていますよね。

道下:自然に対して知らず知らずに人間がやってきたことが、その結果として何かの形になって跳ね返ってくると思うんです。いいことも、悪いことも。十勝は豊かな自然、肥沃な大地に恵まれていて、私たちはその恵みを受けて農作物という食べ物をつくっている。だから、私は日々この十勝という地に対して感謝しているし、「ありがとうございます」と言って収穫しています。食べる人たちも自分が食べているものを通じて自然の恵みに感謝できる、そういうものをつくりたいですね。

※6 肥培管理

作物を栽培する際に、施肥(せひ:肥料を与える)、水やり、土寄せ、害虫駆除などを行い、総合的に管理すること。

※7 農業改良普及員

農家の方々に直接接して、農業指導、経営相談、農業に関する情報提供などを行う国家資格を持った都道府県の職員。

間もなく収穫期を迎える「ゆめちから農場」にて