離乳後期(9~11カ月ごろ)になると、赤ちゃんは自分から食べ物を手でつかんで口に運ぶようになります。この時期にたくさん手づかみ食べをさせてあげると、のちのちスプーンやフォークを上手に持てたり、食への関心が増してなんでもよく食べるようになったりと、赤ちゃんの成長にうれしいことがたくさんあるといわれています。
さらに、手づかみ食べは赤ちゃんの脳の発達にもいい影響があるのだとか。詳しいお話を、コドモノいっぽクリニック院長の丸山友紀先生に聞きました。
体のさまざまな部位とつながっている脳。中でも手と顔を支配する領域は広く、脳の中で互いに隣接しています。そのため、【手で触れる→指でつまむ→口に運ぶ→口の中でもぐもぐ・カミカミする(口のまわりの筋肉を使う)→口全体で味や触感を確かめる】という手づかみ食べの一連の動作では、脳の広範囲が刺激されていると考えられます。
また、手づかみ食べでは五感をフルに使います。目で食べ物の色や形を認識したり、触ることで温度を感じたり、口に入れてかたさや味を確認したり、鼻でにおいをかいだり、かんだときの音の違いを楽しんだり。赤ちゃんに幅広い刺激を経験させてあげられるように、いろいろな色や形、温度、かたさ、味、におい、食感の食材を用意してあげられるといいですね。
離乳後期(9~11カ月ごろ)、赤ちゃんが自分から食べ物をつかんで口に入れるようになったら、そろそろ手づかみ食べを開始してもいいサイン。ただ、赤ちゃんによっては手がべたつくのが苦手で、手づかみ食べに積極的ではないことも。その場合は無理強いせず、手がべたつかないようなメニューを用意して見守りましょう。赤ちゃんの体とテーブルの高さを調節するなど、赤ちゃんが手づかみ食べをしやすい環境を整えてあげることも大切です。赤ちゃんの「自分でやってみたい」気持ちをサポートして、「自分でできた」という楽しい気持ちをたくさん経験させてあげましょう。
手づかみ食べを進める上で大切なことは、「自分で食べることができた」という楽しさやうれしさをたくさん経験させてあげること。
初めは口に入れるとすぐにおいしさ(甘み)を感じるものや、頑張ってかまなくても食べられる口どけのいいものが◎。かぼちゃやさつまいもをやわらかく煮たもの、食パンの白い部分、赤ちゃんせんべいなど、自然な甘みを感じる食材がおすすめです。一口で食べられるよう、サイコロ状に切って食べさせましょう。
慣れてきたら、カミカミを楽しめるような、少し弾力のある食感のものも食べさせてみて。5~7cmの長さのスティック状に切った野菜(やわらかくゆでたもの)やパンケーキ、小さなおにぎりや豆腐ハンバーグなど、いろいろな食感を体験させてあげましょう。スティック状に切った食パンに野菜ペーストなどを挟むのもいいですね。手がべたつかないから食べやすく、栄養バランスが気になるときにもおすすめです。
※赤ちゃんに手づかみ食べをさせるときは、一度に口に入れてしまわないように必ずそばで見守ってください。
食への興味・関心を育てるのはもちろん、脳の発達にもうれしいメリットがいっぱいの手づかみ食べ。赤ちゃん自身が楽しいと感じることはもちろんですが、ママ・パパが一緒に喜んでくれることも、赤ちゃんの食べる意欲につながります。
ときには、食べ物をうまくつかめずこぼしてしまったり、食べ物とそうではないものの区別がつかず投げてしまったりすることがあるかもしれません。事前に椅子やテーブルの下に新聞紙を敷くなど片づけがラクになる工夫をして、ママ・パパがおおらかな気持ちで進められるといいですね。
(構成・文/たまひよ編集部)
【取材・監修】丸山友紀先生:コドモノいっぽクリニック院長。
『小児科による産後ケア』など、「楽しい」子育てサポートを行っている。
1児の母。小児科専門医、日本血液学会専門医。