子どもの創造力をはぐくみ、親子のコミュニケーションにもなる絵本。せっかくなら、子どもが喜んでくれて、ママ・パパも楽しめるものがいいですよね。でも、たくさんある絵本の中から何を選べばいいのか迷うことも。そこで今回は、大人も子どもも大好きなパンにまつわるおすすめの絵本を、絵本ナビ編集長・磯崎園子さんに教えてもらいました。年齢別の絵本の楽しみ方もぜひ参考にしてください。
『このパン なにパン?』
作・絵: ふじもと のりこ
出版社: 鈴木出版
「パン パン このパン なんのパン?」リズミカルな楽しい問いかけにこたえてくれるのは次のページ。「たっぷり とろーり クリームパン」「あまい においの いちごジャムパン」。半分に割った中からとろーりクリームや甘いジャム、なんておいしそう!身近なパンが次々に登場するこの絵本。あんぱん、カレーパンにメロンパン、チョココロネも。あてっこ遊びも楽しめますね。
パンの好きな子どもたちにはもちろん、まだまだそんなに食べたことのないはずの赤ちゃんでも楽しめるのは、繰り返しの言葉の耳心地の良さと、並んだパンがとても見やすいから。順番に指をさしてみたり、「パン、パン」と声に出してまねしてみたり。その反応をよく観察してみてくださいね。
『ぱん だいすき』
作: 征矢 清
絵: ふくしまあきえ
出版社: 福音館書店
ぷーんといいにおいがしてくるのは、パン屋さん。いろいろな形のパンがたくさん並んでいます。今日は何を買おうかな。ながーいフランスパンやアンパン、クロワッサンに大きな食パンもありますよ。ああ、どれもこれもおいしそう。だからパンって大好き。やさしいタッチと色合いがとても魅力的。なんだかすぐにでもパン屋さんに行きたくなってしまいましたよ。
パンが好きな子はパン屋さんが大好き。赤ちゃんだって、きっと同じです。なんだかふわふわした魅力的なものがたくさん並んでいて、でもよく見ると色んな形をしているみたい。「ああ いいにおい」、お母さんのうれしそうな声をききながら、じっと観察の時間を楽しんでくれるはずです。
『ぽんちんぱん』
作: 柿木原 政広
出版社: 福音館書店
「ぱんぱん しょくぱん ぽんちんぱん」美味しそうなパンの写真と一緒に流れてくるのは不思議なリズムの言葉。声に出して読めばなんだか歌みたい。大好きなパンをちぎってみると、今度は顔の登場です! 食パン、あんパン、子どもたちが好きなパンがどんどん続いていきますよ。
もしかしたら、小さな子どもたちがパンを好きな理由の一つに、その言葉の「響き」があるのかもしれませんよね。「パン パン」って声に出してみると確かに楽しいのです。色々な感性を刺激してくれる「パン絵本」です。
赤ちゃんは絵本が大好き! このころの赤ちゃんはまだまだ言葉を理解しているわけではないし、反応も少ないけれど、赤ちゃんなりに体中のさまざまな感覚を使って楽しんでいます。ママ・パパは、心地の良いリズムの言葉や、変化のある色や形で描かれた絵本を、語りかけるように繰り返し読んであげてくださいね。
『パン どうぞ』
作: 彦坂 有紀、もりと いずみ
出版社: 講談社
見てください、この魅力的なパンの姿。しっとりと静かにそこに存在しているのはクリームパンやあんぱん。きつね色の表面に思わず触れたくなっていると、ぱくっとひと口。中から出てきたのは……? 見た目だけでなく、舌触りや食感まで感じられるようなこの絵、実は木版画なのです。ほかにはない、独創的な「パン絵本」です。
パンのおいしさってなんでしょう。究極に突き詰めたようなその絵を前に、小さな子どもたちはきっとくぎ付けになってしまうはず。「どうぞ」と呼びかけて、思わずパンを食べようとしてしまったなら、それはもう大成功ですよね。そのとき感じた想像の中のおいしさを親子で一緒に味わってくださいね。
『サンドイッチ サンドイッチ』
作: 小西 英子
出版社: 福音館書店
パンが主役の絵本もいいけれど、こんな風にバターを塗って、しゃきしゃきレタスに真っ赤なトマト、大きなチーズをのせて…サンドイッチに大変身! こんな華やかな演出ができるのも、パンの大きな魅力ですよね。さて、次は何をのせようかな。
とにかくみずみずしく彩り豊かな野菜が、どんな形でパンの上に重ねられて、どんな組み合わせでサンドイッチとしてできあがっていくのか、それを見ているだけでもワクワクするこの絵本。読み終わったら、親子で一緒にまねしてみたくなっちゃうはず。
『パンめしあがれ』
作: 視覚デザイン研究所
絵: 高原 美和
出版社: 視覚デザイン研究所
表紙を見れば、説明不要。とにかくリアルで美味しそうな絵です。こんがり焼けたトーストに、バターが溶けて。一緒に食べるのは目玉焼きにソーセージ? 「朝はパン」というご家庭にはぴったりの1冊ですね。
これはもう、読んでいるママやパパがその感動を伝えればいいのです。「ああ、美味しそう!」「なんだかいいにおいがしてくるね」「口に入れたらカリっとしているのかな、ふんわりしているかな」その嬉しそうな様子を見ていたら、子どもたちだってパンのある食卓ごと好きになっちゃうはず。
身体的にも生活リズム的にも成長の変化が著しい1才ごろ。絵本を読むときも、指をさすようになったり、笑い声が出たり、まねしてみたり。絵本に対する反応が変わっていくのを観察するのも、この時期の醍醐味です。
『ねずみさんのながいパン』
作: 多田ヒロシ
出版社: こぐま社
あれあれ、ねずみさん。そんなにながいパンを持ってどこにいくのかな? いろいろなおうちの前を通るけど、そこはぞうさんのおうちだったり、きりんさんのおうちだったり。最後にたどり着いたねずみさんのおうち、ながーいテーブルについて家族みんなで「いただきまーす」。
パンをテーマにしたかわいらしいお話。こんな風に次から次へおうちと動物たちの家族が登場したら、小さな子どもたちはうれしくなっちゃうはず。でもやっぱり、どこの家の食卓も「おいしそう」なのが大きなポイントです。気が付いたことをたくさん話し、寄り道をしながら、何度も読んであげてくださいね。
『そらとぶパン』
作・絵: 深見 春夫
出版社: PHP研究所
トンネルの中からいいにおいをさせながらやって来たのは……焼きたてのパン! みんなはパンに乗って、そのままフワリと浮き上がり、空にのぼっていくのです。大きな雲の中で出会ったのは「パンのくに」。ああ、なんてすてきなのでしょう。ところが…!? こんな乗り物があったらいいなあ。
やっぱり最初の大きな盛り上がりはパンの列車がやってくる場面。どんなにおいがするのか、焼きたてのパンってどんな感触なのか、乗った感じは? そのまま空へ飛んだときの気持ちよさは? そんなことを親子で一緒に想像しながら、一緒にうっとりしながら楽しんでくださいね。
いよいよ簡単なストーリーも楽しめるようになってくるころ。絵本を読みながら会話をしたり、まねをして遊んだり、自分の気持ちと重ね合わせてみたり。今までとは違う味わい方ができるようになりますよ。
『からすのパンやさん』
作: かこ さとし
出版社: 偕成社
パンと言って思い出すのは、まずこの絵本。そのくらい長い間愛され続けているその秘密は、なんといってもずらりと並んださまざまな形をしたユニークなパン、パン、パン。その数なんと80種類以上! どんな形にも焼き上げられるのがパンの大きな魅力であり、子どもたちが惹きつけられるポイントですよね。
お話を読み聞かせている途中、もしその子がパンの並んでいるページにくぎ付けになってしまったとしたら、お話は中断してでも心おきなくたっぷり眺めさせてあげてくださいね。最高に幸せな時間を過ごしているはずです。
『くまくまパン』
作: 西村 敏雄
出版社: あかね書房
幼なじみのくまさんとしろくまさんが始めたパンや。開店するとお客さんがたくさん! ところが、一番のおすすめのパンを尋ねると、「わたしがつくった あんぱんです」「いやいや わたしがつくった カレーパンです」あらあら、二人は大げんか。お店も大ピンチ。そこにやってきたのは、王様で……。
あんぱんとカレーパン、どっちがおいしいかと聞かれたら、誰だって困ってしまいますよね。だって、どっちも好きだから。でも王様はケンカを止めるためのいいアイデアを思いつくのです。もし自分だったらどうするか、そんなことを想像してみるのも面白そう。
言葉が豊かになり、体力もついてくると、好奇心も知識欲も強くなり、「なんで?」「どうして?」が止まらなくなる子もいるでしょう。また、保育園や幼稚園に通うようになり、人間関係がぐっと広がるのもこのころ。お兄さんやお姉さんになる子が多い時期でもあり、感情や表現が少しずつ複雑に。絵本でもストーリーが楽しめるようになります。
『ぎょうれつのできるパンやさん』
作・絵: ふくざわ ゆみこ
出版社: 教育画劇
おいしいパンが焼きあがったのに、お客さんがひとりもやってこない、ふっくらおじさんのパンやさん。それもそのはず、とっても山奥にポツンと一けん建っていたから。ところがいいにおいをかぎつけて、最初にやって来たお客さんは…森の動物たち!
行列のできるパンやさんにはやっぱりちゃんと理由があるんですね。おいしそうなパンが、動物たちとのやり取りでさらにおいしいパンに生まれ変わっていく様子はとってもワクワクします。おいしいポイントを一つ一つきちんとひもといていけば、パンに対する興味がさらに大きくなっていくはず!?
『パンのずかん』
作: 大森 裕子
監修: 井上 好文
出版社: 白泉社
「おいしそう」をとことん突き詰めたリアルな絵が大人気の食べ物図鑑絵本シリーズより「パンのずかん」。「まるいパン」「しかくいパン」「やまがたパン」「ながいパン」など独自なグループ分けもユニーク。ずらりと並んだパンは各国から集合した実際にあるパンばかり。そのクオリティーの高さに大人の心もわしづかみに。全部食べてみたい!
パンにはこんなにも種類がある…その事実を目の当たりにするだけで、きっと子どもたちは夢中になってしまうはず。どの国で生まれたのか、どんな名前なのか、材料は? 知りたくなるのは子どもも大人も同じ。一緒に勉強してくださいね。
身体も心も急成長するころ。大人っぽい発言をしたかと思えば、急にぐずりだしたり…。自分の中に芽生えるいろいろな気持ちを味わう時期です。このころは、主人公の気持ちになって一緒にドキドキしたり、笑ったり、悲しくなったり。いろいろな「きもち」と出会える絵本がおすすめ。世界観が広がるようなストーリーや、心が奪われてしまうような美しい絵本、もっと知りたい!を満たしてくれるような本など、没入する喜びも体験できるといいですね。
『ノラネコぐんだん パンこうじょう』
作: 工藤 ノリコ
出版社: 白泉社
パンが好きなのは、みんなも一緒。だけどノラネコぐんだんの食いしん坊っぷりはけた外れ。パン屋さんをのぞいているうちに、どうしても食べたくなってしまい、見よう見まねでパン作り。それがとんでもない事件を引き起こし…!? 大人気、大爆笑のパン絵本。
読み聞かせポイントなんて必要のないくらい、読んでいるだけで大爆笑間違いなしのこの絵本。ちょっと悪くて、でも愛嬌たっぷりな彼らの魅力を最大限に生かすなら、どんな読み方がいいのか。そんなことを研究してみるのも面白そうですね。
『おじいちゃんとパン』
絵・文: たな
出版社: パイ インターナショナル
おじいちゃん、今日は何をぬるんだろう?「ぼく」がじっと見ている前で、甘いものが大好きなおじいちゃんは、毎日食パンにいろいろなものをのせて食べている。「なんだ ちびすけ 食べたいのか 」そう言って、ひと切れくれるのです。おじいちゃんの「とっておき」は今もぼくのお気に入り。
おじいちゃんのつくる甘いパンのおいしそうなこと! 焼き方を変えたり、順序が違ったり。ケチケチしない量も大事。そのこだわりのレシピは、絶対まねしてみたくなるはず。絵本を通して覚える味があってもいいですよね。
年長さんになってまわりがきちんと見えてくるころ。お友だちや大人のこともよく見ています。想像の世界を「ありえないこと」だとわかっていても、どこかで信じることができるのもこのころの特徴。ストーリーや絵の魅力に惹かれたり、言葉遊びの面白さに目覚めたり、知らない世界に触れてみたり…。ページを開けばいつでもその世界へ行ける、その喜びをたくさん体験させてあげましょう。
ただただおいしそうな絵が並ぶものから、言葉のリズムを楽しむもの、ワクワク・ドキドキするストーリーに富んだものまで。パンにまつわる絵本はバラエティー豊か。子どもの興味や成長にあわせて選ぶのはもちろん、ママ・パパが面白そうと感じたものを読み聞かせしてあげるのもいいですね。今回紹介したパン絵本をきっかけに、パンも絵本も、親子で思う存分楽しんで。
(構成・文/たまひよ編集部)
【取材協力】
絵本ナビ編集長 磯崎園子さん
1974年生まれ。絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本の紹介、コンテンツページの企画制作、絵本作家さんへのインタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「絵本」「子育て」をキーワードとした情報を発信。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。
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