赤ちゃんの成長に合わせて段階的に進める離乳食。でも、まだ歯が生えていないのに、かたさのある食材を「カミカミ」させてもいいの?と迷うこともありますよね。そこで歯の生え方と離乳食の進め方について、小林歯科クリニック院長の小林京子先生に聞きました。
乳歯の歯胚(歯のもとになる芽)は、妊娠7、8週目ごろからでき始め、妊娠4ヵ月ごろから石灰化が始まります。生まれてからの赤ちゃんの歯は、おっぱいを飲んだり、離乳食を食べたりして歯ぐきに刺激が与えられることで、少しずつ成長し、やがて歯ぐきから出て生えてきます。
歯が生え始める時期には個人差がありますが、まだ歯が生えていないからとやわらかいものばかり食べさせていると、歯ぐきへの刺激が足りず、なかなか歯が生えてこないことも。
ある程度かたさのある食材を歯ぐきでつぶして食べられるようになったら、積極的に歯ぐき食べをさせて、歯ぐきにたくさん刺激を与えてあげましょう。
離乳食を進める上で大切なのは「口(舌)の動き」。赤ちゃんの口の動きを促せるよう、食材のやわらかさに注意して、離乳食を進めましょう。
以下の「離乳食を始めてOKのサイン」が2つ以上当てはまったら、離乳食の始めどき。
赤ちゃんの口の動き | 最初は口の端から離乳食が出てしまうこともありますが、慣れると舌を前後に動かして、上手にゴックンできるようになります。 |
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食材のやわらかさ | 初めのころはとろとろのポタージュ状、慣れてきたらポッテリとしたペースト状 |
食べさせ方 | 大人のひざに赤ちゃんを横向きに座らせます。スプーンが見えるように赤ちゃんの正面から食べ物をのせたスプーンを差し出して、下唇に置き、口を閉じたらスプーンを引きます。 |
以下の「ステップアップのサイン」が全て当てはまったら、ステップアップの始めどき。
赤ちゃんの口の動き | 舌を上下に動かして上あごに食べ物を押し当てて、モグモグと口を動かしながら食べ物をつぶす練習をします。 |
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食材のやわらかさ | 指でラクにつぶせる絹ごし豆腐くらい |
食べさせ方 | おすわりが安定したら、ベビーラックなどに座らせて食べさせても。下唇に食べ物をのせたスプーンを置き、赤ちゃんが食べ物を取り込むのを待ち、モグモグ、ゴックンをしてから次の1さじを。 |
以下の「ステップアップのサイン」が全て当てはまったら、ステップアップの始めどき。
赤ちゃんの口の動き | 舌が左右にも動くようになり、食べ物を舌で奥の歯ぐきに移動させてつぶせるようになります。 |
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食材のやわらかさ | 指でつぶせるバナナくらい |
食べさせ方 | 自分で食べる経験をさせたい時期。手づかみで食べられるメニューを用意して。手で食べ物をつかみやすいよう、体とテーブルの高さなどを調節してあげましょう。 |
以下の「ステップアップのサイン」が全て当てはまったら、ステップアップの始めどき。
赤ちゃんの口の動き | 舌を前後左右上下に動かすのが上手になり、食べ物を前歯でかじり取り、奥の歯ぐきでつぶします。 |
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食材のやわらかさ | スプーンでラクに切れる煮込みハンバーグくらい |
食べさせ方 | 大人と同じテーブルで食べさせると食欲アップ。子ども椅子に座らせ、ひじがテーブルにつくように椅子などを調節すると食べやすくなります。手づかみ食べを中心にしつつ、スプーンやフォークを持たせてみても。 |
以下の「ステップアップのサイン」が全て当てはまったら、ステップアップの始めどき。
赤ちゃんの口の動き | 奥歯が生えてきて、噛み砕けるように。一口の量がわかり、口をよく動かして食べます。 |
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食材のやわらかさ | フォークで切れる焼きハンバーグくらい |
食べさせ方 | 足が床や足乗せ台にしっかりつく椅子に座らせて。手づかみ中心に1人で食べさせながら、少しずつスプーンやフォークを使って食べる練習も。 |
Q:歯が生えるのが遅い子は、離乳食もゆっくり進めるほうがいい?
歯は、モグモグと口をよく動かして食べ、歯ぐきに刺激が伝わることで生えてきます。まだ歯が生えていないからとやわらかい離乳食ばかり食べさせていると、噛む力が育たず、歯の発達が遅れる可能性も。
歯が生えていなくても、口をモグモグと動かしたり、舌も前後、上下、左右など動かせているようだったら、その動きに合わせた離乳食にステップアップさせていきましょう。
Q:歯が生えてきたけど、離乳食をまる飲みしてしまいます
歯の生え方と離乳食のステップは、必ずしも一致しません。
歯が生えていても、口をよく動かさず、まる飲みしている場合は、食材をうまくすりつぶすことができていない証拠。食材を舌と上あごで簡単につぶせる絹ごし豆腐くらいのやわらかさにして、舌と上あごでつぶす練習をさせてあげましょう。
また、食材をお茶や水で流し込んでいる場合は、お茶や水は食後に飲ませるようにするなど、工夫しましょう。
離乳食の進み方には個人差があります。「歯が生えてきたから」「もう〇ヵ月になったから」とあせらず、赤ちゃんのペースに合わせて楽しく進めてあげましょう。
離乳食を通して、赤ちゃんは舌の筋力と操作性を身につけます。ですが、最近「舌の力」が弱いために、舌が通常よりも低い位置にある「低位舌(ていいぜつ)」になる子どもが増えています。
舌は、通常上あごにくっついていますが、低位舌では舌が気道をふさぐような位置にあるため呼吸がしづらく、口呼吸やいびき、クチャクチャ音を立てて食べる、いつも口が開いているなどの症状が現れたり、歯並びに影響したりします。
低位舌は、よく噛んで食事をするなど、舌の操作性を鍛えることで改善します。子どもが低位舌かも?と思ったら、日々の食卓に歯ごたえのある食材を増やして、嚙む回数を増やしてみましょう。
赤ちゃんが大人と同じ食事をできるようになるために大切な離乳食。赤ちゃんの歯が生えるきっかけや、噛む力を育てるためにも大切なステップです。目安となる月齢はありますが、あくまで目安。赤ちゃん・子どもの様子をよく観察して、あせらず、「わが子」のペースで進めてくださいね。
(構成・文/たまひよ編集部)
【取材協力・監修】
小林歯科クリニック 院長 小林京子先生
2005年に東京都立川市にクリニックを開業。子どもの食育や、あごを広げて歯を抜かずに行う歯列矯正に取り組む。マタニティ歯科、赤ちゃん歯科、小児歯科など、マタニティ期からの継続した丁寧なケアを行っている。
HP:小林歯科クリニック
【監修】
中村美穂先生:管理栄養士、フードコーディネーター、国際薬膳調理師。
保育園栄養士として乳幼児の食事作りや食育活動、地域の子育て支援事業に携わった経験を活かし、料理教室や書籍等のレシピ提供を行う。2児の母。
HP:おいしい楽しい食時間